身近な人が息をひきとることは、とても悲しいことです。
しばらくは、頭の中が真っ白になり、何も考えられない状態が続くはずです。
しかし、お葬式に向けた手続きや準備は、あなたを待ってはくれません。残酷かもしれませんが、病院で亡くなった場合は、すみやかに手続きを始めていかなければならないのです。
ご遺体をどこへ連れて行けばよいのか、誰に運んでもらうのか、お葬式は、どの葬儀社に依頼するか、誰にいつどのタイミングで連絡するか・・・。
そんな状況に陥っても最善の行動をとるために、葬式・葬儀に関わる手続きや亡くなってからお葬式までにどうすれば良いかをお伝えしたいと思います。
【目次】
葬式をすみやかに行うための手続き
ここでは、故人がお亡くなりになってから、すみやかに葬式を執り行うための手続きや各種届け出などをご紹介していきます。
死亡診断書・死亡検案書の手配
病院で亡くなると、死亡診断書(死体検案書)が発行されます。
自宅や旅先などで死亡した場合は、医師を呼んで死亡診断書を書いてもらわなければなりません。死体検案書は、事故や事件による死亡の場合、検死などを経て発行されます。
この死亡診断書(死体検案書)がないと、後々の火葬と埋葬が行えません。
死亡届を提出する
死亡届と死亡診断書(死体検案書)は同じ用紙(A3横)におさまっており、左半分が「死亡届」、右半分が「死亡診断書」となっています。

期 限 | 亡くなってから7日以内 |
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届出先 | 故人の本籍地、もしくは死亡地、届出人の住所地の市区町村役場 |
届出者 | ①同居の親族②親族以外の同居者③家主、地主または家屋、土地の管理者④同居の親族以外の親族 ⑤後見人、補助人および任意後見人 ※実務上、葬儀社が提出を代行することもある |
注意すること | ①印鑑を持参する(死亡届に押印したもの)②死亡診断書のコピーを2~3通とっておく(生命保険の請求時などに必要)。国外で亡くなった場合、死亡から3ヵ月以内に提出する。 |
【後見人・保佐人・補助人】
判断力が不十分な人を保護し、権利を守る成年後見制度において、その人をサポートする立場として家庭裁判所から選任された人。
喪主を決めておく
葬儀の手続きや準備で一番に選定しなければいけないのが喪主(もしゅ)です。
喪主とは遺族の代表者として葬儀を取り仕切る大切な役割りです。そのため、葬儀の準備を行う際は喪主を決めない限り進みません。
喪主の選定方法として最も有力なのが故人の遺言です。遺言に喪主が指定されている場合は、それに従って喪主が決まります。特に遺言での指定がない場合は遺族の中から喪主が選ばれます。
遺族の中でも、喪主の優先順位があります。以下の表にまとめてみました。
優先順位 | 続柄 |
1 | 配偶者 |
2 | 息子(長男➝次男・・・) |
3 | 娘(長女➝次女・・・) |
4 | 両親 |
5 | 兄弟 |
6 | 友人 |
故人に喪主になる遺族がいない場合、故人の友人が行うこともあります。
また最近では、昔ほど優先順位に縛られなくなってきています。長男ではなく次男が行うケースも多々あります。
危篤から納棺までの手続きと流れ
大切な方が危篤状態になられた時に一番近くに居られる方は、親族の方や仲の良いご友人に危篤の状態であることを連絡しなければなりません。
悲しい時ではありますが、冷静に対処していかないといけません。
危篤の連絡を受けたらやるべきこと
病院から連絡を受けた場合、ご自身が病院へ急ぐことに共に、身近な人への連絡も必要になります。一般的に、危篤を知らせる人の範囲としては、
- 同居の家族
- 三親等以内の親族
- 親しい友人、知人
などと言われてますが、優先して連絡すべきなのは「最期に立ち会ってほしい」人です。
戸籍上の関係も大切ですが、実際のお付き合いの深さも考慮して本人が看取ってもらいたいと思うであろう人や、あなたが看取ってもらいたいと思う人に連絡を入れてあげましょう。
ただし、あまり人数が多くなると、病院や他の患者さんに迷惑がかかってしまいますので、最低限の人選とされることをおすすめします。
ご臨終・訃報連絡
ケース1:ご自宅で亡くなられた場合
まずは掛かりつけ主治医(病院)への連絡を行ってください。※主治医・病院のない方はへの連絡を行います。
ケース2:病院で亡くなられた場合
医師の死亡判定(死亡診断書の受け取り)が終了し、お身体のご処置が終わると病院から出発することになります。
ご臨終後の主な流れ
①ご臨終
⇩
②医師の死亡判定
⇩
③遺体の清拭・着替え(遺体を清めてあげる行為)
⇩
④遺体を一時安置(病院の霊安室)
⇩
⑤遺体を搬送
⇩
⑥遺体を安置(葬祭場、自宅など)
⇩
⑦遺体のケア(末期(まつご)の水・清拭・死化粧)
※末期の水とは、あの世でのどが渇かないようにという願いを込めて、口に人生最後の水を含ませます。ガーゼにくるんだ脱脂綿に水を含ませ、口元を湿らせます。
ご遺体の搬送
遺体が一時安置されたら、すみやかに搬送するための準備を整えましょう。
病院からは、通常その日のうちに、夜中に亡くなった場合は翌朝には遺体を搬出するよう求められます。葬儀社が決まっている場合は、すぐに連絡をして搬送の依頼をします。
ほとんどの葬儀社は24時間連絡を受け付けていますからすぐに連絡します。搬送先は、葬儀社の所有する葬祭場か自宅、又は遺体安置の専用施設になります。
慌ててよく考えずに葬儀社を決め、お葬式すべてを依頼してしまうと、お葬式の内容に納得いかずに後悔したり、料金トラブルの原因にもなる可能性があります。
※葬儀社が決まっていない場合は、搬送と安置だけを請け負ってくれる葬儀社に連絡して相談してみましょう。
<搬送だけでも可能な葬儀社のご案内>
小さなお葬式の場合:ご遺体の搬送のみでも行っています。
1~10km 16,632円(税込)~10kmごとに2,000円~5,000円加算。日本全国・海外まで24時間365日搬送可能。
いい葬儀の場合:搬送料金の目安1~10km15,400円(税込)延長
10kmごとに2,000円~5,000円加算されます。
※搬送距離や時間帯により若干変わりますのでご確認ください。
通夜から火葬までの手続きと流れ
ここからは、通夜から火葬までの手続きと流れを順に紹介していきます。
通夜の直前に葬儀社と確認する事
通夜を行う直前に葬儀担当者と確認しておきたいことは以下の通りです。
1:受付係の確認(受付担当者・香典帳などの準備)
参列者から受け取る香典の記録などの管理方法・受付開始時間や通夜終了後の香典の処理について調整および確認を行う。
2:供物・供花の確認(氏名のチェック・並べる順番の確認)
届いた供物や供花などの確認をしたり、後々親族と並べ方で揉めないように並列順を再確認しておきましょう。
3:遺族や親族の席次確認
席次は宗派によって多少違いますが、通常は祭壇に向かって右側前方が遺族や親族のせき、向かって左前方は来賓席となります。
4:参列者が行う焼香の手順確認
仏教の葬式では通夜の場所により焼香の仕方も座礼・立礼・回し焼香と違いがあり、参列者が戸惑うことも予想されるので、見やすい場所に焼香の手順を紹介した張り紙をしておくとよいです。
また参列者が受付を済ませ、焼香を行ってから通夜振る舞いの会場へ向かうまでの通路は参列者が迷わないように事前に葬儀スタッフと打ち合わせをして案内板などを準備しておく。
なお、宗派によっては焼香の作法も違ってくるので不明な場合は、僧侶に確認しておくと良いでしょう。
5:会葬礼状と返礼品の確認(数量の確認、誤字や脱字のチェック)
会葬礼状の内容や喪主の名前に間違いがないか、誤字なども含めしっかりと確認しておく。会葬礼状と返礼品の数量は不足がないように少し多めに用意しておくと良いです。
※返礼品の数量は葬儀社との打ち合わせで参列者に渡した分だけ精算するという条件をつけておくことを忘れずに。
6:通夜振る舞いに出す料理の確認
参列者の数によって変化する通夜振る舞いの料理ですが、ほとんどの場合オードブルを用意するので量が少ないという事態にはなりにくいです。あまり神経質に料理の種類を考えなくても良いです。
7:僧侶の食事の確認
通夜振る舞いには僧侶にも声をかけ参加してもらいますが、用事があり退席するケースもあります。その時は食事の代わりに御膳料として5千円程を読経料とは別に包みます。
通夜当日の流れと時間
通夜は一般的に18時や19時に始まるところが多いです。
- 遺族や親族は通夜開始の1時間前には控室などに集合します。
- 15分前には遺族や親族は会場内に着席しておき、一般参列者が続いて着席していきます。開始直前に僧侶が入場し、通夜が開式されます。
- 僧侶がお経を読み上げます。
- 僧侶のお経が10分程度続いた後、遺族、親族、一般参列者のお焼香が始まります。
- 開始から50分後頃に僧侶が退場します。
- 開始後1時間ほどで通夜が閉式になります。
- 10分程度で通夜振る舞いの席へ移動し、故人への供養と、弔問に来てくださった方へのお礼を込めて食事や飲み物を出します。通夜振る舞いの所要時間は1~2時間程度です。
- 喪主、世話役などがお礼の言葉を述べて解散となります。
以上が通夜の一般的な流れです。お焼香の順番や僧侶の読経の時間などは、宗派により異なる場合がありますので注意してください。
葬儀・告別式の流れを把握する
葬儀は10時から15時の間で執り行われることが多いです。
- 遺族や親族はお葬式開始の1時間前には控室などに集合します。
- 15分前には遺族や親族は会場内に着席しておき、一般参列者が続いて着席していきます。開始直前に僧侶が入場し、お葬式が開式されます。
- 僧侶の経読が10分程度続いた後に、故人に引導が渡されます。
※引導とは故人が仏門に入るために渡されるものです。 - 代表者による弔辞や弔電が読み上げられます。(規模により割愛される場合もあります)
- 遺族や親族、一般参列者のお焼香が始まります。
- お焼香が済むと喪主の挨拶が行われます。
これで葬儀式は閉式となります。
出棺して火葬までの流れと時間
葬儀・告別式が終わると、祭壇から棺をおろして最後の別れとなります。
1.故人の周りに生花を飾る「別れ花」を行う
喪主→喪主の配偶者→親兄弟→子供というような順番で行います。
※不燃物など、入れることができないものがありますので確認して入れるようにしましょう。
2.出棺
寝台車まで運びます。棺は重量があるので数人で運びます。運び出すときも車に乗せるときも、どちらも足側が先に来るようにします。
※故人が迷って家に帰ってこないようにという意味があります。
出棺の際は喪主が位牌を、喪主の次ににつながりが深い親族が遺影を持つのが一般的です。棺を寝台車に納めると、喪主あるいは、代表者が参列者の方に対して挨拶を行います。
3.火葬場への搬送
火葬場に向かう際は遺族や親族は自家用車、あるいはバス・タクシーなどを利用し、喪主は位牌を持って寝台車で火葬場に向かいます。
このとき、全員が火葬場へ向かうのではなく、留守番役として数名残る事が多いです。留守番役は、ご遺骨を迎える準備や式場の片付けなどを行います。
火葬場へは、納めの式で読経をするために僧侶が同行します。
4.火葬
火葬場へ着くと「納めの式」を行います。これが故人と遺族の最後の別れで、火葬炉の前に棺を置いた状態で行われます。僧侶が読経を行うのもこのときです。納めの式が終わると、棺を火葬炉へ入れて火葬が始まります。
火葬はおおよそ1時間前後かかるもので、その間は控室などで待機します。
火葬許可証と分骨証明書の確認
火葬許可証
火葬許可証:死亡届を役所に提出して発行されるもの
※遺体の火葬を許可してもらうための書類でこれがないと火葬できません。
分骨証明書
分骨証明書:お骨を分骨する際に発行してもらう書類です。
希望によりお骨を2か所以上に分けて納骨したいというケースが発生した場合2か所目以降に納骨する際に必要になる書類です。
※分骨証明書は、火葬場・お墓の管理者に発行してもらいます。お骨を分ける数だけ必要になりますので注意して下さい。
初七日はいつ行う?法要の流れと時間
「初七日」とは、故人が亡くなってから七日目のことを指します。
七日間とは、故人が亡くなってから三途の川に辿りつくまでの期間とされてます。
※仏教の中でも浄土真宗は例外です。浄土真宗では、亡くなってすぐ極楽浄土に辿りつくと考えられているため、初七日に法要する必要はないのです。遺族が故人を想い偲ぶ形式的な意味合いがほとんどです。
初七日の数え方
初七日は「しょなぬか」または「しょなのか」と読みます。
一般的には、故人が亡くなってから7日目を指します。
繰り上げ初七日・繰り込み初七日とは?
初七日法要は、もともと亡くなってから7日目に行う法要ですが、現在では、葬儀の当日に行われていることがほとんどです。
実際の期間で行うと、葬儀が終わり4日目ぐらいに行うことになります。そうなると、仕事の調整が難しかったり、遠方から参列される方は大変です。葬儀の当日に行うようになったのは、現在のライフスタイルに合わせたともいえるのでしょうね。
「繰り上げ初七日」と「繰り込み初七日」との違い
- 繰り上げ初七日:火葬の後に行う
- 繰り込み初七日:火葬の前に行う
火葬場に行ったあとに斎場へ戻るのが難しい場合や時間の都合で、告別式のあとの火葬前に初七日法要をおこない、火葬中の時間を利用して精進落としをおこなう方法が、最近は多いです。
こうした方法を選んでも、儀礼を欠くことにはなりません。本来、行われるとされる7日目には、故人の成仏を祈り手を合わせましょう。
葬儀後に行う4つの手続き
葬儀が終わったてから速やかに行う手続きのまとめになります。
所得税準確定申告と納税
故人が給与収入を2,000万円以上得ていた、自営業者であった、給与所得があり他の所得合計が20万円を超えるなどの場合は申告と納税が必要です。
- 期限:死亡から4ヵ月以内
- 手続き先:亡くなった人の所在地の税務署
- 必要書類:確定申告書付表、委任状
生命保険金の請求
故人が生命保険に加入していた場合、請求によって死亡保険金が支払われます。
- 期限:死亡から2年以内
- 手続き先:契約していた保険会社
- 必要書類:保険会社指定の死亡保険金請求書
- 保険証券、死亡診断書
- 被保険者の死亡記載のある住民票
- 本人確認書類など
死亡保険金の受取人が被保険者となっていた場合は、死亡保険金が相続財産の対象になるため相続確定後に請求します。
相続税の申告・納税
相続する財産がある場合には、申告・納税が必要です。
- 期限:死亡日の翌日から10ヵ月以内
- 手続き先:被相続人の住所地の税務署
- 必要書類:申告書、相続税総額の計算書、相続財産に関わる明細書、被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書など。
相続する財産に相続税が課せられない場合は必要ありません。
相続放棄
相続人が相続財産を放棄した場合にのみ手続きが必要です。
- 期限:死亡から3ヵ月以内
- 手続き先:被相続の住所地の家庭裁判所
- 必要書類:相続放棄申述書、申述人の戸籍謄本、被相続人の死亡記載のある
戸籍謄本など
まとめ
ここまで、危篤から葬儀後までの手続きをわかりやすくご紹介してきました。
あらゆる場面で手続きがあったり、流れがあったと思います。いろんな場面で慌てないように覚えておいてほしいと思い紹介してきました。
- お葬式までの流れと手続き
- 死亡届、死亡診断書
- 死亡後に速やかに行う手続き
- 通夜から火葬までの流れ
- 火葬許可証、分骨証明書
- 繰り上げ初七日、繰り込み初七日
- 葬儀後に行う手続き
これらの事も、いざという時に慌ててしまい忘れてしまうかもしれません。わからない事は、葬儀社の担当者の方とよく打ち合わせをしてくださいね。
また、自分なりに葬儀の手続き一覧表などを作っておくと便利だと思います。
出来ることは今からでも始めてみましょう!