身近な人が亡くなると、悲しみを乗り越えて普段の日常生活へ立ち返る節目にと、ある一定の期間、死を悼(いた)み、身を慎むために喪に服すことが慣習となっています。
この一定期間のことを「忌服(きふく)」、または「服喪(ふくも)」と言ったりします。忌服の「忌」は忌中を、「服」は喪中をそれぞれ指しています。
ですが、現代では、あまり慣習をご存知ない方も多いのではないでしょうか?
- 忌中、喪中の一定期間って?
- 身を慎むとは、何をしてはいけないの?
- 喪中といえば、喪中はがき。マナーってあるの?
という疑問が頭に浮かんでくると思います。
今回は、喪中期間とは何か、喪中期間でしてはいけないこと、OKなこと、そして、喪中期間にすべきことである喪中はがきの出し方についても合わせて、ご紹介していきます。
【目次】
喪中はいつまで?
ところで、喪中と忌中の違いってご存知ですか?神道、仏教、儒教からくる考え方が由来です。最初に、喪中と忌中の違いを説明していきます。
喪中と忌中の違い
忌中
忌中は、「死は穢(けが)れたものである」という神道の考えから生まれたもので、その穢れが他人にうつらないように外部との接触を断ち「自宅にこもって故人のために祈りを捧げて過ごす期間」を設けたのが由来です。
忌中の期間は、一般的に、故人のご臨終の日から四十九日法要までです。
喪中
喪中は、故人を偲ぶ期間で、昔は喪服を着る期間とされていました。
喪中の期間は、故人との関係、付き合いの度合いによっても変わりますが、一般的に、故人のご臨終の日から「一周忌」法要までです。
忌中、喪中の間は、身を慎むために、お祝い事や遊興などは控えることとされています。最近では、価値観の多様化などで実情は変わってきています。
忌中、喪中の期間で控えるべきこと、OKなことについて、詳しく後述します。
喪中の範囲・期間は故人との続柄で異なる
喪中の期間は、故人との続柄、付き合いの度合いによって変わります。
一般的に、喪に服する人も、故人との続柄で二親等までとなっているようです。
亡くなった方とご自分との関係で下記の表でご確認くださいね。
故人との続柄 | 喪中期間 |
父母、義父母、配偶者 | 12ヵ月~13ヵ月 |
子供 | 3ヵ月~12ヵ月 |
祖父母 | 3ヵ月~6か月 |
兄弟姉妹 | 1ヵ月~6か月 |
曾祖父母、伯叔父母 | 喪中としない |
ポイントは、これらはあくまでもひとつの目安にすぎず、家や地域の慣習、故人との親密さによっても異なります。
昔は、この喪中の範囲や期間は、法律で定められていましたが、現在では規定は無く明確に定められているわけではありません。
三親等にあたる叔父さんや叔母さんでも同居していたり、家族同然の付き合いをしている友人なども喪に服したり、あくまでも、人が故人を偲ぶ期間なので最終的に喪中かどうかは本人が決めることでもあります。
喪中期間には喪中はがきを送る
喪中の期間は、基本的には身を慎み、おめでたいことをしないということが基本なので、年賀状を送らず、年賀を欠礼する挨拶状である、「喪中はがき」を送ります。
喪中はがきとは?
喪中はがきは、正式には「年賀欠礼状」と言います。喪中期間に新年を迎える場合に、新年を喜ぶ挨拶を控えることを詫びるものです。
喪中はがきというと、自分が喪中であることや、自分の家に不幸があったことを知らせる訃報のはがきと思っていませんか?
実はそうではなくて、本来は、「喪中のため、今年は新年のお喜びをお伝えできませんので、失礼いたします」という趣旨の挨拶状なのです。
喪中はがきを送る時期・相手
喪中はがきは「新年の挨拶を控える」ことを伝えるものですので、11月中か遅くとも12月初旬までには届くようにしておきます。
相手が喪中と知らずに年賀状を出すこともあるので、先方が年賀状の用意を始めるよりも早めに届くようにすることがマナーです。
喪中はがきを出す範囲は、喪中はがきが「年賀を欠礼する挨拶状」であることを踏まえると、普段年賀状をやり取りしている方に出す、というのが一般的です。
喪中でも年賀状は受け取れる?
喪中の場合でも、年賀状を受け取ることはマナー違反ではありません。
年賀状は、昨年の感謝を伝えるのと共に新年のあいさつを伝える挨拶状です。年賀状を受け取ることは、年始の挨拶を受けるという意味ですから、喪中でも特に問題はありません。
受け取りたい場合には、例えば、喪中はがきの文面に、「年賀状をお待ちしています」や、「例年どおり近況をお知らせください」などと書き添えてみてはどうでしょうか?
喪中はがきの書き方・文例
喪中はがきは、インターネットの印刷サービスで簡単に注文できます。
書き方はほぼ定型文となっており、下記が基本になります。
- 喪中で新年の挨拶を控えることへのお詫び
- 身内が亡くなったことの報告(誰が、いつ、亡くなったのか)
- お世話になったお礼、変わらぬお付き合いを願う言葉
例えば、下記のように縦書きで記載します。

①喪中につき年末年始のご挨拶を謹んでご遠慮申し上げます
②本年十月に母○○○が八十二歳にて永眠いたしました
③生前賜りましたご厚情に深く感謝申し上げますとともに明年も変わらぬご厚誼を賜りますよう謹んでお願い申し上げます
②の身内が亡くなったことの報告(誰が、いつ、亡くなったのか)は、省略しても大丈夫です。
喪中の間、何がダメ?喪中に控えた方がよいこと
では、喪中の期間中に、具体的に何を控えた方がよいのでしょうか?
控えた方がよいことは
- お正月のお祝い
- 結婚式などの慶事・祝い事の参列と挙行
- 神社への参拝
とされています。
神道、仏教からくる考えで控えた方がよいこととされている事柄ですが、最近では実情が異なっていることが多いです。
最近の実情も合わせて、一つずつ見ていきましょう。
お正月のお祝い事
1年という長い期間の喪中の間に、お正月を迎えることは多いと思います。
お正月のお祝いの定番、正月飾り、おせち料理、お屠蘇(とそ)など、新年を祝う意味合いのものは控えるべきとされています。
正月料理は、最近では、「おせち」と呼ばずに普通の食事としてお重から出して食べるなど、工夫して頂くことが多いようです。
また、お年玉もお祝いにあたるため、控えた方がよいのですが、「書籍代」「お小遣い」「文房具代」として贈ることが多いようです。
身内の行事なのでご家族の判断で、というのが実情のようです。
結婚式などの慶事・祝い事の参列と挙行
参列
喪中期間中は、結婚式などの慶事や祝い事に参列することは控えるべきとされています。
最近では忌中期間(四十九日)を過ぎれば、参列もよいのではという意見も多いようです。
特に、友人や会社関係の結婚式は通常通り参列することが多く、その場合には、喪中であることを敢えて伝える必要はありません。
挙行
親戚が結婚式が決まっている場合は、一般的には、喪中期間は避けた方がよいとされています。
ですが最近では、参列と同様に、忌中期間(四十九日)を過ぎれば、両家で話し合うことが前提ですが、結婚式を予定通り行う場合が多いようです。
結婚式をキャンセルや延期したりすると、会場やホテルのキャンセルや出席者の都合を合わせてもらうなど影響が大きいため、式を予定通りに行う選択をする人が増えてきているためです。
神社への参拝
忌中期間は、神社への参拝を控えるべきとされています。
神道では忌明け(最大で50日)、穢れが晴れているという考え方ですので、49日法要後であれば、神社への参拝はOKです。
<神社とお寺の違い>
神社⇒神道の宗教施設で、鳥居がある所
お寺⇒仏教の宗教施設で、仏像やお墓がある所
仏教には「穢れ」の概念はないので、忌中にお正月を迎えた場合には、初詣はお寺にお参りするとよいでしょう。
喪中でも控える必要がないこと
忌明け後で、喪中期間でも控えた方がよいかどうか判断に迷いそうな事をご紹介します。
- お寺への初詣、参拝
- お中元・お歳暮
- イベント事への参加
は、喪中でも控える必要はありません。
お寺への初詣、参拝
お寺への初詣、参拝や厄除けなど、忌中・喪中でも控える必要はありません。
仏教では死を穢れとせずこの世とあの世をさまよう期間とされる四十九日に法要を行い、それを一区切りとします。むしろ忌中や喪中のお寺へのお参りは良いこととされているようです。
お宮参り※や七五三、その他の安産祈願などの祈願・祈祷も忌明け後の喪中では問題ないといわれています。お願いしたいお寺(神社)へ相談するのがおすすめです。
※お宮参り:生後30日前後を目安に、子供の健やかな成長を願い神社にお参りする行事。お寺にお参りすることもできて、その場合には「お初参り」といいます。
お中元・お歳暮
お中元・お歳暮を贈ることも、受けとることも、特に控える必要はありません。お中元やお歳暮は日頃お世話になっていることへの感謝を表す風習であって、お祝いではないからです。
贈る相手が喪中の場合で気になるときは、「お中元」⇒「暑中御伺」、「お歳暮」⇒「寒中御伺」として贈るとよいでしょう。その際は、お中元やお歳暮の代わりとの一筆を添えます。
イベントへの参加
イベントは、喪中で控えるかどうかはご自身(家)で判断してよいものです。
子供の学校行事の中でもお祝いにあたる、例えば入学(式)、卒業(式)なども派手になることを避けつつ、お祝いするのが一般的です。
その他、旅行やクリスマス等の季節ごとのイベントも特に問題ありません。ご自身の気持ちや、イベントの趣旨や人間関係などを考慮して、出欠を決めましょう。
まとめ
今回の記事では、
- 忌中の期間は、ご臨終の日から48日法要まで、喪中の期間は、ご臨終の日から一周忌法要まで
- 喪中の期間は故人との続柄により異なる
- 喪中はがきのマナー、出し方について
- 忌中期間には、神社への参拝を控えるべき
- 喪中期間には、慶事・お祝い事の参加・挙行を控えるべき
という内容について、説明してきました。
忌中、喪中の習慣は仏教、神道に基づく昔からの慣習であり、今では、多様な価値観のために各人それぞれの過ごし方を選択することが増えています。
残された家族が大切な人を失った悲しみと向き合い、日常を取り戻すために、忌中、喪中期間はやはり必要なのではないでしょうか。
