ある日突然喪主あるいは喪主に近い立場となり、急遽葬儀を執り行わなければならなくなった場合、あなたならどうしますか?
葬儀費用は非常に高額で、急に用意しなければならなくなった場合、遺族の負担は大きいです。
また、高額過ぎるが故に、葬儀費用が払えないという状況に陥ってしまうケースもあります。
葬儀費用が払えない場合でも、この記事を読むことで、
- 補助金が貰えるケース
- 国や自治体から援助してもらえるケース
- 葬儀費用を抑える方法
などを理解することができ、解決策を見出すことが可能です。
葬儀費用が払えなくても決して諦めずに、故人を気持ち良く送り出してあげましょう。
【目次】
一般的な葬儀費用の相場とは?
一般社団法人日本消費者協会では、3年に一度「葬儀についてのアンケート調査」を行っています。
このアンケートでは、
- 葬儀費用に関すること
- 葬儀の場所
- 葬儀に際して困ったこと
などを調査し、葬儀の実態を明らかにしています。
葬儀費用の総額は約196万円
一般社団法人日本消費者協会「第11回『葬儀についてのアンケート調査』報告書/2017年」によると、葬儀費用の総額は約196万円になるということが分かりました。
通夜からの飲食接待費 | 30.6万円 |
---|---|
寺院への費用 | 47.3万円 |
葬儀一式費用 | 121.4万円 |
葬儀費用の合計 | 195.7万円 |
(※金額は平均額なため、合計と葬儀費用は一致しません。)
200万円近い葬儀費用をいきなり準備することは、遺族にとってかなり大きな負担となります。
一般的には故人の生命保険を充てますが、万が一故人が生命保険に加入していない場合には200万円近い葬儀費用を遺族はほぼ全額負担しなければなりません。
葬儀のスタイルによって異なる
葬儀費用は、執り行う葬儀のスタイルによって異なります。
ここでは、「小さなお葬式」の葬儀費用を参考にしていきます。
小さなお別れ葬 | 12.9万円 |
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小さな一日葬 | 30.9万円 |
小さな家族葬 | 45.9万円 |
小さな一般葬 | 60.9万円 |
葬儀社によって葬儀費用は異なりますが、
- 通夜の有無
- 参列者の数
- 規模の大小
によって金額も変わってきます。
尚、上記金額はあくまで最低限必要な費用であり、オプションを追加するもしくは葬儀場のスケジュールや葬儀社の状況次第では、更に葬儀費用が増額していきます。
香典や香典返しの相場は?
葬儀では、辞退しない限り香典を頂きます。
香典も葬儀費用に充てることは可能なので、全額を遺族が負担しなければならないというわけではありません。
香典に関しては、「香典に関するアンケート(平成28年度:一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会)」がまとめられています。
世代別に見た香典の平均額
50~60代が特に香典の平均額は高くなる傾向にあります。
親類関係で見ると60代が最も平均額が高く、それ以外の「職場関係」「勤務先社員の家族」「友人・その家族」「隣人・近所」は年齢が上がるとともに、平均額も上昇しています。
関係/自分の年齢 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代以上 |
祖父母 | 9,386円 | 14,201円 | 17,018円 | 37,646円 | 21,667円 |
親 | ― | 32,164円 | 33,715円 | 52,171円 | ― |
兄弟姉妹 | 13,833円 | 21,400円 | 24,737円 | 51,920円 | 42,568円 |
おじ・おば | 7,214円 | 11,552円 | 12,291円 | 21,475円 | 23,442円 |
その他親類 | 6,617円 | 7,462円 | 8,926円 | 13,298円 | 17,285円 |
職場関係 | 4,177円 | 5,541円 | 4,984円 | 5,648円 | 5,525円 |
勤務先社員の家族 | 3,661円 | 4,652円 | 5,320円 | 5,326円 | 5,701円 |
取引先関係 | 7,571円 | 5,615円 | 6,933円 | ― | 6,865円 |
友人・その家族 | 5,130円 | 5,162円 | 5,533円 | 6,000円 | 6,353円 |
隣人・近所 | 5,118円 | 4,443円 | 4,139円 | 4,849円 | 5,047円 |
その他 | 4,135円 | 5,250円 | 4,282円 | 5,844円 | 8,677円 |
故人との関係別に見た香典で最も支払われた額と平均額
香典を包む額に関しては、親類関係を除くと5,000円が最多回答額でした。
故人との関係が近しいほど、香典の額も必然的に高くなる傾向があります。
故人との関係/最多回答額・平均額 | 最多回答額 | 平均額 |
祖父母 | 10,000円 | 17,280円 |
親 | 100,000円 | 62,318円 |
兄弟姉妹 | 30,000円 | 39,518円 |
おじ・おば | 10,000円 | 17,063円 |
その他親類 | 10,000円 | 12,583円 |
職場関係 | 5,000円 | 5,447円 |
勤務先社員の家族 | 5,000円 | 5,131円 |
取引先関係 | 5,000円 | 6,897円 |
友人・その家族 | 5,000円 | 5,972円 |
隣人・近所 | 5,000円 | 4,810円 |
その他 | 5,000円 | 6,274円 |
付き合いの長さや深さ、世代によって香典の額は変わります。
しかし、香典だけでは葬儀費用を補うことは非常に厳しく、大半の費用は遺族が用意しなければなりません。
香典返しの額と渡す時期
香典返しは、一般的に「忌が明けた」後に贈ることが多く、故人が亡くなってから約30~50日後が「忌明け」に当たります。
地域によっては、「即日返し」の場合もあります。
いずれにせよ、頂いた香典の半額程度の品物をお返しすることになるので、葬儀費用として併せて準備しておく必要があります。
葬儀社に申し込む前と後で対応は異なる
多くの場合、病院で亡くなり、病院から自宅に遺体を搬送してもらうことになります。
遺族側で葬儀社を手配することも可能ですが、大半は病院から近場の葬儀社を紹介してもらうことになるでしょう。
病院から遺体を搬送してもらう場合、その前後で葬儀に関する支払いの対応は異なってきます。
病院から遺体を搬送する段階
自宅にせよ葬儀場にせよ、遺体を搬送してもらう段階では葬儀社と契約は完了していません。
葬儀の見積もりに関する提示はしていても、葬儀のキャンセル自体は可能です。
故人を目の前にして気が動転してしまい、冷静な判断ができない時に契約を押し切ってくる葬儀業者も少なくはありません。
葬儀費用が払えないということであれば、はっきりと断りましょう。
遺体の搬送代金は、ドライアイスや安置所の使用などを含めると約5万円前後が相場です。
搬送代金は支払う必要があるので、その点には注意しましょう。
葬儀の契約をしてしまった段階
遺体を搬送してもらった後、葬儀の申し込みが完了すると葬儀社と契約を交わしたことになります。
そのため、仮に葬儀費用が払えないからと言って葬儀をキャンセルするとキャンセル料が発生します。
キャンセル料は葬儀社によって異なりますが、場合によっては葬儀費用の50%近くのキャンセル料が発生するケースもあります。
請求までに多少時間はあるものの、支払い自体が滞ってしまうと最悪の場合には法的措置を取られてしまうこともあります。
葬儀社と契約した以上、それを踏み倒すことは困難なのです。
葬儀費用が払えない場合の対処法とは
葬儀社と契約後に葬儀費用が払えない場合、どのように対処したら良いのでしょうか。
現金や預貯金で全てカバーすることが厳しい場合、葬儀ローンやカードローンを上手く利用することで負担を軽減することができます。
葬儀ローンを利用する
葬儀ローンとは、葬儀費用のためのローンです。
状況に応じて葬儀費用を用意してもらうことが可能です。
近年では葬儀費用だけでなく、仏壇や仏具、墓地、墓石などに必要な費用に対しても利用できるようになってきました。
葬儀ローンは、
- 葬儀社
- 銀行
- 労金や信金
で取り扱っている商品の一つです。
尚、葬儀ローンには審査があるので、状況に応じては利用できない場合もあります。
葬儀ローン①葬儀社
葬儀社によっては、カード会社と提携した葬儀ローンを取り扱っている場合があります。
《葬儀社の葬儀ローンの特徴》
- 金利相場が10~20%前後と高い
- ネット申し込みが24時間可能
- 来店不要
- 審査難易度はやや低め
- 融資までのスピードが速い
急いでいる人、すぐにでも葬儀費用を用意しなければならない人にとっては、葬儀社の葬儀ローンはおすすめです。
葬儀ローン②銀行
大手銀行の場合には、葬儀ローンではなく「フリーローン」として扱っている場合が多いです。
地方銀行でも葬儀ローンではなく別名目で取り扱っていることがあるので確認が必要です。
ただし、銀行系の葬儀ローンを利用する場合には、
- 該当銀行の営業地区内に居住している
- 該当銀行の口座を所有している
- 前年度の収入が150万円以上
などに当てはまる、もしくは、
- 源泉徴収票など所得が分かる証明書
- 住民票の写し
- 届出印
- 印鑑証明書
などを用意しなければならないので少々手間がかかります。
《銀行の葬儀ローンの特徴》
- 提出書類が多いので融資まで最長1週間はかかる
- 低金利
- 来店必須
時間的な余裕があり、少しでも低金利のところでローンを組みたい人にはおすすめです。
葬儀ローン③労金や信金
銀行と同じく、葬儀ローンではなく「フリーローン」などの商品名で扱っています。
条件面も銀行と類似していて、
- 該当労金・信金の営業地区内に居住
- 年収による制限あり
- 口座開設もしくは会員であること
などに当てはまっていなければそもそも申し込むことができません。
《労金や信金の葬儀ローンの特徴》
- 低金利
- 融資まで最長10日程度かかる
- 来店必須
既に口座を持っているもしくは会員になっていて、低金利でローンを組みたい人にはおすすめです。
尚、葬儀社の中には支払い方法で葬儀ローン自体に対応していないところもあるので、事前に確認しておく必要があります。
カードローンを利用する
葬儀ローンも多少の審査日を要するので、すぐにでも費用を捻出しなければならない場合には、カードローンが最も早い解決策になります。
最短30分で審査が完了し、早ければその日のうちにお金が借りられるため、緊急を要する場合には利用するのも一つの手です。
最大30日間は金利が0円のところも多いので、無理な借り入れをしなければ高額な葬儀費用をフォローしてくれる救世主となります。
葬儀費用を安く抑えるための方法
ローンなどで借り入れることなく、払える分だけで葬儀を執り行うことで、負担を減らしつつもきちんと故人を見送ることができます。
葬儀費用を抑えるためには、葬儀社のプランをよく確認しておきましょう。
葬儀の規模やスタイルを検討する
葬儀費用とは、「寺院費用」「飲食接待費」「葬儀一式費用」を合わせた金額のことを指します。
《寺院費用》
読経料や戒名料のこと。読経や戒名が不要な場合には発生しない
《飲食接待費》
参列者に振舞う料理や飲み物、会葬返礼品のこと
《葬儀一式費用》
ご遺体のお迎えや搬送、通夜、葬式、告別式、火葬など葬儀を執り行う上で必須になってくるものに支払う費用
参列者の数や葬儀の規模を小さくすることで、葬儀費用を安く抑えることは可能です。
葬儀のスタイルに関しても、
- 一般葬
- 一日葬
- 家族葬
- 直葬(火葬式)
- 無宗教葬
など様々あるので、予算に合わせて無理のない葬儀プランを選ぶことが重要です。
火葬式のみで済ませる
火葬式は「直葬」と呼ばれることもあり、通夜や告別式を行わず、納棺後そのまま火葬を行うことです。
故人が亡くなった後24時間は火葬できないと法律で定められていますが、時間的にも金銭的にも遺族の負担が少ない葬儀のスタイルとして、近年注目を集めています。
葬儀費用を国や自治体から援助してもらう方法3選
実は、条件次第では葬儀費用を国や自治体から援助してもらうことができます。
国や自治体が援助してくれる「給付金制度」を上手く活用することで、葬儀費用の負担を減らすことが可能です。
故人が国民健康保険加入者であること
故人が国民健康保険に加入していた場合、「葬祭費」として給付金を受け取ることができ、自治体によりますが3~7万円程度の援助を受けることができます。
故人の葬儀が終わってから2年以内に市役所・区役所の保険年金課に申請することで、給付金を受け取りましょう。
《申請時に必要なもの》
- 故人の国民健康保険の保険証
- 喪主の名前が確認できるもの
(例:会葬礼状、葬儀社発行の領収書のコピーなど) - 喪主の口座が確認できるもの
(例:通帳のコピー) - 喪主の印鑑
各自治体によって給付額や申請条件は異なるので、一度確認してみることをおすすめします。
故人が社会保険の被保険者あるいは被扶養者であること
故人が社会保険の被保険者もしくは被扶養者であった場合、「埋葬料給付金」という給付制度を利用することができます。
《申請時に必要なもの》
- 故人の社会保険の保険証
- 喪主の名前が確認できるもの
(例:会葬礼状、葬儀社発行の領収書のコピーなど) - 喪主の口座が確認できるもの
(例:通帳のコピー) - 喪主の印鑑
一般的に故人が会社員で会社勤めをしていたのであれば、「埋葬料給付金」を受け取ることは可能です。
全国健康保険協会に直接申請、もしくは故人の勤務先の労務担当者が申請手続きをしてくれる場合もあります。
故人が後期高齢者医療保険制度に加入していること
故人が後期高齢者医療保険制度に加入していた場合、「葬祭費」として最大5万円の給付金を受け取ることができます。
葬儀を終えてから2年以内に市役所・区役所の保険年金課に申請手続きを行いましょう。
《申請時に必要なもの》
- 被保険者証
- 喪主の名前が確認できるもの
(例:会葬礼状、葬儀社発行の領収書のコピーなど) - 喪主の口座が確認できるもの
(例:通帳のコピー) - 喪主の印鑑
申請書は窓口で貰えるので、一度保険年金課に行って手続き方法を確認してみましょう。
葬儀費用が一切払えない場合の最終手段
葬儀費用が払えない場合の対処法を様々ご紹介してきましたが、どうしても葬儀費用を払えないというケースもあるかと思います。
最終手段として、「葬儀費用は支払えないけれども最低限の葬儀は行いたい」という人に向けた解決策をお伝えします。
葬祭扶助制度・生活保護葬を利用する
生活困窮者に向けて、葬儀費用の支援を行う制度です。
誰しもが利用できるわけではなく、一定の条件が定められています。
《利用するための条件》
- 生活保護を受けている人が亡くなり、家族以外の人(賃貸の大家など)が葬儀を執り行う場合
- 喪主が生活保護を受けている場合
いずれかに当てはまる場合には、葬祭扶助制度・生活保護葬を利用できる可能性があります。
給付額は最大20万円なので、最低限の葬儀であれば執り行うことができますね。
市民葬・区民葬を利用する
各自治体が行っているもので、住民の葬儀費用の負担軽減を目的とした制度です。
公営の葬儀場の利用、サービスが最低限であることから、葬儀を低価格で行うことが可能です。
《利用時の注意点》
- 故人や喪主の住んでいる自治体でのみ利用できる制度である
- サービスが最低限なので決してよいものとは限らない
- 低価格ではあるが0円ではない
以上の3点を理解した上での利用ならば、葬儀社に依頼するよりも安くなるケースもあるのでおすすめです。
葬儀費用を捻出する前に注意すべき点
葬儀費用を制度や給付金を利用して捻出することは可能ですが、利用する前に注意しなければならない点があります。
これらを理解した上で利用しないと、いざという時に支払いが間に合わなかったりする場合があるので要注意です。
故人の預金口座は凍結されるため使用できない
故人の預貯金口座は、亡くなった後すぐに凍結されてしまいます。
本来であれば故人が生前に口座整理を行っておくべきなのですが、そこまで準備ができている人は決して多くはありません。
凍結解除には、相続人全員の署名・押印をした遺産分割協議書などの提出が必須となり、非常に手間がかかります。
故人の預貯金を葬儀費用に充てようと考えている場合には注意が必要です。
死亡保険金や給付金は受け取るまでに時間がかかる
一般的な生命保険の死亡保険は、早くても1週間程度の時間を要します。
給付金に関しても、早ければ半月前後で受け取ることが可能です。
これは書類提出などがスムーズに行われた場合であり、書類に不備があるもしくは審査が長引いてしまった場合には、1ヶ月以上かかってしまうケースも珍しくありません。
すぐにお金を受け取りたい場合でも、多少待たなければならない点は理解しておかないといけません。
【まとめ】葬儀費用が払えない場合でも対処法はある
葬儀費用が払えない場合でも絶望する必要はなく、対処法はいくつもあります。
葬儀に関しても必ずしも派手に盛大に行う必要はなく、最近では小規模で家族のみが参列する「家族葬」などの人気が高まりつつあります。
今回ご紹介した方法は利用できる条件がそれぞれ異なるため、予め確認しておく必要があります。
葬儀費用は高額ですが、故人を気持ち良く見送るためにも、給付金や制度のことなどをしっかりと理解し、来るべき日に備えておきましょう。
